水やりの記録

本や映画などの感想です。自分に水をあげましょう。

荒木博行『自分の頭で考える読書』

  • 「本とどう付き合っていくか」をテーマに、本の選び方や本を通じた問いの育て方、読書にまつわる様々な悩みについて書かれた本です。
  • 面白かったのは、本の種類を「新たな/既知の問い」×「新たな/既知の答え」の2軸から、①問いの発見(新問×新答)、②答えの発見(既問×新答)、③既知のリマインド(既問×既答)に分類していた点です。自分の日ごろの選書傾向を振り返ると、ついつい②③が多くなってしまっているので、①にもチャレンジしていかねば、と思いました。
  • 本をすべて読み切ることよりも、その本がどのような「問いと答え」を持っているのかをおおよそ把握し、自身の頭の中の「共有図書館」に整理しておくことが重要という点も納得でした。
  • 本の知識をつなげて活用するイメージとしてスノードームにたとえられていたのもわかりやすかったです。その前提として「刻み込む」「冷凍保存」「つなげる」の3ステップが示されているのですが、個人的にはこの「刻み込む」に時間をとるのがなかなか難しいと感じます(そのためにこうしてブログに感想を書いているのですが、正直なかなか時間がとれず・・・)。ですが、やはり何かしらのかたちで読んだ本の内容をアウトプットしておくことは重要ですね。
  • また、本に「読まれる」のではなく「読む」読書をするために、「熱狂」と「懐疑」のバランスが重要とも述べられています。すべてに納得するのではなく、モヤっとした部分にこそ自我があり、その問いを持ち続けていくことが、まさに「自分の頭で考える読書」につながるという説明は、そのとおりだなと。
  • ただ、その懐疑のあり方は実は難しくて、論理的なものなのか、なんとなくの拒否反応(Twitterでよくみられる逆張り的なもの)なのか、そこをきちんと見極めないと明後日の方向へも行ってしまいかねないなとも感じました。
  • ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉は本書で初めて知りました。答えの出ない事態に耐える力、とのことで、すぐにわかりやすさを求めてしまうこの時代だからこそ非常に重要な概念だと感じます。
  • 巻末の参考文献もとても興味深かったです。読みたい本のリストが増えました。とりいそぎ、小林秀雄『読書について』と、帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ』を読んでみたいです。ショーペンハウアーも遠い昔に読んだことがあるのですが、改めて再読したい。

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  • ちなみに、ショーペンハウアーの『読書について』から以下の文章が引用されていたのですが、あまりに現代のTwitterにあてはまりすぎていて苦笑しました。もし彼が現代に生きていたら卒倒するのでは…

自分の考えを持ちたくなければ、その絶対確実な方法は、一分でも空き時間ができたら、すぐさま本を手に取ることだ。これを実践すると、生まれながら凡庸で単純な多くの人間は、博識が仇となってますます精神のひらめきを失い、またあれこれ書き散らすと、ことごとく失敗するはめになる。